Zsh のカスタマイズは日進月歩 − 失敗したコマンドを履歴に残さない
日々、かなりの頻度でシェルのコマンド履歴を検索します(よね?)。長かったりよく覚えていなかったりするコマンド(複数のコマンドをパイプでつないだり、コマンドに様々なオプションや引数を渡したり…)を、履歴の検索なしに再度実行するのはとてもつらいです。
ということでそんな便利なコマンド履歴の検索ですが、気になることもあるにはあります。その一つが、タイプミスをしたりオプションを間違えたりして失敗したコマンドを、うっかりまた履歴から検索して実行してしまうことです。これは失敗したコマンドを履歴から消去しない限り起こり得る問題なので、初めから失敗したコマンドは履歴に残さないように設定してみました。なお、タイトルにあるとおり対象のシェルは zsh になります。
こちら を参考にしました。zsh の フック関数(9.3.1 Hook Functions) という仕組みを使います。下記のような設定を .zshrc
などに記入すれば良いはずです。
__record_command() { typeset -g _LASTCMD=${1%%$'\n'} return 1 } zshaddhistory_functions+=(__record_command) __update_history() { local last_status="$?" # hist_ignore_space if [[ ! -n ${_LASTCMD%% *} ]]; then return fi # hist_reduce_blanks local cmd_reduce_blanks=$(echo ${_LASTCMD} | tr -s ' ') # Record the commands that have succeeded if [[ ${last_status} == 0 ]]; then print -sr -- "${cmd_reduce_blanks}" fi } precmd_functions+=(__update_history)
コマンド履歴の保存に関するフック関数 zshaddhistory
は、ドキュメントによるとコマンドの実行直前に呼ばれるようです。通常はこのタイミングで保存されるのですが、今回は実行結果の成否を見てから保存するかを決めたいのでここでは保存しません。そこで __record_command()
という関数内でコマンドをグローバルな変数 _LASTCMD
に保存しておき 1
を返します(0
を返せば通常どおり HISTFILE
に保存されます。2
を返すと履歴ファイルには保存されませんが、Ctrl-P/N
などでさかのぼれる内部ヒストリには保存されます)。この関数を zshaddhistory_functions
に追加します。
続いて実際に履歴を保存する関数が __update_history
になります。postcmd
というフック関数があるのかと期待したところ、ないのですが、どうやら precmd
関数がコマンドの実行直後に呼ばれるようなので(呼ばれるタイミングについては この記事 が詳しいです)、こちらを使います。まずはじめに、実行したコマンドの終了ステータスを last_status
変数に保存します。なお、自前でヒストリファイルを更新するため zsh の履歴保存に関するオプション相当の機能はここで実装する必要がある気がします。ということで、スペースで始まる行(やスペースだけの行)は保存しないようにチェックを行ない(hist_ignore_space
相当)、複数のスペースは tr
で一つにまとめます(hist_reduce_blanks
相当)。最後に、終了ステータスが 0
の場合は履歴に print
コマンドで保存します(参考:こちら)。この関数を precmd_functions
に追加します。
これでおおよそ所望の動作にはなったはずです。*1 ストレスが減って良いですね!
*1:直前の終了ステータスを見ているため失敗するコマンドと成功するコマンドを ; でつなげた場合などには記録されてしまいます。コマンドをつなげる場合には && を使うなどしましょう。